Liber LXV: V


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V

  1. ああ! 我が「主アドナイ」よ、 「真珠の財宝の家」で「首領」と戯れる者よ、 貴方の接吻のこだまを聴かせておくれ。
  2. 貴方の愛にわななく携挙の時の木の葉のように星々の天界は震えぬのか? 我は貴方の完全性の偉大なる風に吹かれ宙を舞う光の火花ではないのか?
  3. 然り、「聖なるもの」は叫び、そして「汝」の閃く意志より我たる 「王」は偉大なる光を燃え立たせる。 我は古く 荒れ果てた土地のにある大いなる都市を焼き尽くす。 我は大いなる不純からくるものを清めるのだ。
  4. そして汝、おお予言者よ、それらのものを見るがよい、 そしてそれらを心に留めるでない。
  5. 今や「虚空」に「柱」が建てられた。 「アシ」は「アサール」を完成させた。 今こそ「ホール」を大地の暗黒の上に墜落した灼熱の星 のような「物質の動物的魂」に引き下ろすのだ。
  6. 夜中、汝は落とされるのだ、おお我が子よ、我が征服者よ、 剣で武装した我が船長よ、おお「ホール」よ! そして彼らは汝を黒くゴツゴツしたキラキラ輝く石として見付け、 崇拝するであろう。
  7. 我が星は汝について予言するであろう。 汝の廻りを乙女達が踊り、 輝かしい赤子達が彼女たちの元に産まれるであろう。 汝は尊大な者を無限の自尊心で、 謙虚な者を自己卑下の恍惚で啓発する。 この全ては何かしら名前無きものによって「既知」と「未知」を超越する。 秘密の「沈黙の場所」に開かれた「秘儀」の深淵と同じようなものであるが故に。
  8. 汝は此方に来たらん、おお我が予言者よ、厳粛な小径を通って。 汝は「忌まわしきものども」に浸されたものを食べたのだ。 汝は「山羊」と「鰐」の前に平伏したのだ。 かの邪悪な者共が汝を遊具に変えたのだ。 汝は厚化粧の娼婦の如く歩き回り、 甘い匂いと中国風の色使いで、街中、うっとりさせる。 汝の眼窩をコールで黒くする。 汝の唇を朱に染める。 汝の頬に象牙色のエナメルを塗る。 偉大なる都市のあらゆる門と道で悪徳を愉しむ。 その街の男共は汝を蹂躙し打ち倒さんと渇望する。 汝の髪を飾り立てる細塵で出来た黄金の飾り物のことを彼らは口にする。 彼らは汝の化粧に彩られた肉体を鞭で打った。 汝は言葉に言い表し得ぬものに苦しんだ。
  9. しかし我は汝の中を油を使わぬ純粋な炎で焼いた。 真夜中に於いて我は月より明るく、 日中に於いては太陽を完全に超え、 汝の存在の側で我は燃え上がり、幻想を払いのける。
  10. それゆえ汝は『我』の前では全く純粋なり。 それゆえ汝は永遠に『我が』乙女なり。
  11. それゆえ汝は我は汝を卓越した愛をもって愛さん。 それゆえ汝を軽蔑する者達は汝を崇めん。
  12. 汝は彼らにとって愛らしく哀れなものであれ。 汝は言いようのない悪で彼らを癒すのだ。
  13. 彼らはその破滅の中で、 二つの暗き星が深淵の中でぶつかり合い、 無限の燃焼の中で燃え盛るが同じが如く変わるであろう。
  14. その間ずっと「アドナイ」は、 雷電の刃と、『柱』の刃と、蛇の刃と、『男根』の刃の、 4つの刃持ちたる剣で我が存在を貫いたのだ。
  15. また彼は我に聖なる語り得ぬ言葉 「アラリタ」 を教えたので、 我はかの六重の黄金を一つの見えない点に溶かし込んだ。 そこは誰も語る事のなき所であろう。
  16. この「作品」の「頭領」が秘密の頭領であるがために、 そのあるじの印が我があるじの名を記した ラピスラズリでできた或る指輪であり、 あるじは私で、その「中央の目」もそうなのだ。
  17. また「彼」が語りて曰く、 これは秘密の印、 だから汝は俗世の者にも、 新参者(ニオファイト)にも、 熱心な者(ジェレイター)にも、 実践者(プラクティカス)にも、 哲人(フィロソファス)にも、 小さき達人にも、 偉大なる達人にも明かしてはならぬ。
  18. しかし免じられた達人には汝自身が明らかにせよ、 もしも 汝の業の細々とした審理の為に彼を必要とするならば。
  19. 汝が嫌う愚かなる者共の崇拝を受け入れよ。 「火」は冒涜されぬ、 ギーバー達の祭壇にも、 「夜の女王」を崇拝する者達の香に汚された「月」にも。
  20. 曇ったダイヤモンド、そして水晶、 更にガラスのかけらの中に貴重なダイアモンドが混じっているように、 汝はそやつらの中に棲むであろう。 真っ当な商人の目だけが汝を見、 汝は彼の掌に摘み入れられ、 男共の前で賞賛されるであろう。
  21. しかし汝はそんなことに気を払わぬであろう。 汝は常に心臓であり、 そして我たる蛇は汝の廻りに巻き付くのだ。 我がとぐろはこれらのアイオンを通して緩むことはなかろう。 変化も悲しみも空虚さも汝を捕らえることはなかろう。 汝はこれら全てを通り抜けたが故に。
  22. そのダイアモンドは かの薔薇を映して赤くなりそしてその薔薇の葉を映して緑になるが如くに育つであろう。 それゆえ汝は「印象」からは離れて留まるであろう。
  23. 我は汝、ゆえに「柱」はかの虚空に確立されている。
  24. 汝も「存在」と「意識」の安定性を超えている。 我は汝であるがゆえに、「柱」はかの虚空に確立されている。
  25. 汝はまたこれらの事を記したかの男に話すであろうし、 そして彼はそれらを秘儀として分かち合うだろう。 汝である我は彼であるがゆえに、 「柱」はかの虚空に確立されている。
  26. 「王冠」から「深淵」まで、それはただ一つ屹立し届きしもの。 無限の球体もまたその輝きと共に光を放つ。
  27. 汝は崇敬の水のプールの中で喜ばん。 汝は汝の乙女達を肥沃さの真珠で飾り立てん。 そのプールの間の神々のリキュールを嘗める舌のように汝は炎を灯さん。
  28. 汝はまた全ての吹き上げる空気を青白い水の風へと転換し、 汝は大地をワインの青い深淵へと変えん。
  29. 弾けるルビーと黄金の閃光は赤く、 一粒で「神々の主」は我が召使いに酩酊せん。
  30. また「アドナイ」がV.V.V.V.V. に語りて曰く 「おお我が小さき者よ、 我がいたいけな者よ、 我が小さく艶めかしき者よ、 我が羚羊よ、 我が美しき者よ、 我が坊やよ、 「無限」の柱を無限の接吻で満たそう!
  31. 安定なものが揺さぶられ不安定なものが静止するように。
  32. それを見る者共が畏怖すべき突然の恐怖により叫ぶ。 物事の終わりが我らのところにやってくる。
  33. そしてそれは均しくそうなった。
  34. 我もまた霊の幻視の中にあり、 星々の高貴なる恍惚の中に二者と二者が組み合わされた、 不信心達の親殺しの壮麗さを見た。 彼らは、紫のローブを纏い紫のワインに酔いながら、 ことのほか笑って喜ぶ。 そして彼ら全体の魂は一つの高潔な紫の花の炎であった。
  35. 彼らは「神」を見ていない。 彼らは「神の姿」を見ていない。 それゆえ彼らは「言いしれぬ光輝の宮殿」を向いて甦えらさせられたのだ。 鋭い剣が彼らの前で打ち出され、 彼らの足下で線虫の「希望」はその死の苦悶の中身悶えせん。
  36. 彼らの掲挙が見える「希望」をバラバラに剪断するように、 「見えぬ恐怖」も逃げ出して最早戻って来ないのだ。」
  37. おお汝らアオルムズダ達アーリマン達を超えるものよ! 幾多の時を通じて汝らは祝福される。
  38. 彼らは「疑念」を草刈り鎌のように形作り、 彼らの花冠を作る「信念」の花を収穫する。
  39. 彼らは「恍惚」を槍のように形作り、 よどんだ水の上に座る古代の龍を貫く。
  40. そして早春に萌え出るもの達は解き放たれ、 人々の渇望は休まるであろう。
  41. そして再び私は我が「主アドナイ」の存在、 更に「聖なるもの」即ち我を「守護する天使」との「対話」 の知識の中に放り込まれた。
  42. おお「聖なる高貴なもの」よ、おお自己を超える「自己」よ。 おお「想像を絶する下品なものの自ら光り輝く姿」よ、 おお我が愛しきものよ、我が美しきものよ。 「汝」我が前に来たりて我に従え。
  43. 「アドナイ」よ、神聖なる「アドナイ」よ、 燦然と輝くいちゃつきを手ほどきしておくれ。 それゆえ我は隠したのだ、 我が掲挙を引き起こす「彼女」の名前を、 魂を惑わす彼女の体の臭いを、 彼女の魂がその体を獣たちへ下賜する光を。
  44. 我はその血を我が唇で吸い尽くし、 その滋養たる「彼女」の美しさを吸い取り、 我が前で「彼女」を貶め、 「彼女」を征服し、 「彼女」に取り憑いたので、 「彼女の命」は我が内にある。 「彼女」の血の中に我は 「神々のスフィンクス」 の秘密の謎掛けを銘記し、 それは誰も理解できないのだ − 純粋で、かつ官能的、みだらな者、 そして古きケムのスライムが 「アメンティの門」 の中に据えたの牢屋の鉄格子を潜り抜けてきた 両性具有者と半陰陽者のみを救え。
  45. おお、 我が崇めるものよ、 我が心地よきものよ、 一晩中かの神酒を「汝の」祭壇に我は注ぎ込むであろう。 一晩中かの生け贄の血を我は燃やすであろう。 一晩中我が喜びの香炉を「汝」の前で我は振り、 そして祈りの熱情は「汝の」鼻を酔わせるであろう。
  46. おお、 「汝」 「象」の国より来たりて、 虎の革に包まれ、 かの霊の蓮で飾られたものよ、 「汝」我が命を「汝の」狂気で酔わせるのだ、 我の逝去に彼女が飛びつくように。
  47. 「汝」に従う「汝の」乙女達に 不死の花々で我々の寝床を覆うように告げよ、 その上で我々が喜びを得ることができるように。 「汝の」サチュロス達に棘をその花々の中に積み上げるよう告げよ、 その上で我々が苦痛を得ることができるように。 その喜びと苦痛は混ざりあって一つの「主アドナイ」への至高の供犠となる!
  48. 我はまた彼方に関わる望ましき者「主」たる「アドナイ」の声を聞いた。
  49. いつもヘラクレスの柱と西の大海の無駄話をしているテーベと其処の寺院の住人にならぬように。 ナイル河は美しき水場ではないかね?
  50. イシスの神官にヌイトのありのままの姿を曝させないように、 何故なら全ての段階は死と誕生であるから。 イシスの神官がイシスのヴェールを上げさせた時に、 彼女の口の接吻によって彼は殺害された。 その時の彼はヌイトの神官であり、 星々のミルクを飲んだのだ。
  51. 失敗と苦痛が崇拝者達から逸れぬようにせよ。 ピラミッドの基礎は日没前の生きた岩の内で切り出された。 王は夜明けにピラミッドの頂上部が遠き国でまだ切り取られぬことを嘆いたか?
  52. そこにはまた角有るヨコバイクサリヘビと語るハチドリが居り、 毒を求めて彼に祈りを捧げていた。 そして「神聖なる一者」たるケムの大いなるヘビが、 王家のウラエウスの蛇が、 彼に答えて曰く:
  53. 我はヌーの空を「百万年」と呼ばれる車の中で行き来したが、 我と対等なセブの上になる如何なる生き物も見なかった。 我が牙の猛毒は我が父より受け継いだものであり、 我が父の父より受け継いだもの。 如何に汝に渡そうか? 幾百万世代にも渡って、 我と我が父が生きてきたように汝と汝の子等が生きており、 そして「力強き者共」の慈悲が汝の子等にこの古代の毒の一滴を授けるやもしれぬ。
  54. そしてハチドリは彼の霊の中で打ちのめされ、 彼の花々へと飛び立ち、 あたかも彼らの間に無為なことが語られたかの如きであった。 さらに暫し後で蛇は彼を撃ち、彼は死んだ。
  55. しかし美しき神たるナイル河の岸の上で瞑想していた一羽の「トキ」が耳をそばだて聞いていたのだ。 そして彼は彼の「トキ」としての道程を脇に置いて、 蛇のようになり、 我が子等の幾百万の世代の一億人の中の 「偶然」 にと語りて曰く、 彼らを 「高貴なる者」 の牙の毒の一滴に到達するものとせよ、と。
  56. そして見よ! 月が3度満ちる前に彼はウラエウスの蛇となり、 そしてその牙の毒は彼と彼の種の中に永久かつ永久に確立される。
  57. おお汝「蛇アペプ」よ、 我が「主アドナイ」よ、 それは最もちっぽけな時間の塵、 この旅は永遠を通り抜け、 「汝の」 視野の中ではそれらの目印は彫刻者の道具によって触れられたことのない美たる白い大理石のようだ。 それゆえ「汝」は我がもの、 今も、 何時までも、 永久に。 かくあれかし。
  58. 更に、我は「アドナイ」の声を聞いた。 「心臓と蛇」の書を封印せよ。 5と60の数の中に汝の聖なる書を封じるのだ。
    美たるファラオの女王の為の王冠に打ち延ばされた純金の如く、 「アサールの死」 の儀式のピラミッドに固められた偉大なる石々の如く、 汝諸々の言葉と行いを互いに結びつけよ、 「我が思い」と汝の喜びと「アドナイ」が全ての中で一つであるように。
  59. そして我が答えて曰く、 汝の言葉に従ってそれはすぐに行われます。 そして行われた。 更にその本を読みそこで議論をした者共は 「不毛の言葉」の荒れ果てた土地へと移った。 そしてその本を彼らの血の中へと封印した者達は「アドナイ」に選ばれた者達であり、 「アドナイの思い」は「言葉と行動」である。 そしてその者達は遠く離れた旅人達が「無価値」と呼ぶ 「土地」 に留まった。
  60. おお蜂蜜と香辛料と全ての完璧を超えた土地よ! 我は我が「主」と共にそこに棲まん。
  61. そして「主アドナイ」は我が内にてお喜びになられ、 我は古い灰色の土地のくたびれた連中の上に「彼の」喜びの「杯」を持っていく。
  62. それを呑んだものは疫病に撃ちのめされた。 醜態が彼らを捕捉し、 そして彼らの苦痛は邪悪の住処の厚く黒い煙のようだ。
  63. しかし選ばれた者達はそれを飲み、 まるで我が「主」のように、 我が美しきもののように、 我が望ましきもののようになった。 このワインに似たワインなどない。
  64. 夕方に「歓喜」 の融けた海へと向かう雲を集めしラーのごとく、 彼らは一緒に燃え立つ心臓の中へと集められた。 そしてラーの王冠たるかの ヘビが死の接吻の金のガードルで彼らを巻き付けたり。
  65. そんな訳でこの書は終わりであるが、 「主アドナイ」は 全ての縁が「雷電」と、 「柱」と、 「ヘビ」と、 「男根」のようなものに関係するものであり、 その中央には星々のミルクを乳首から噴出させる「女」のような彼が居る。 然り、彼女の乳首からでた星々のミルクだ。

訳注


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