「魔術について知りたいんですが、どんな本を読んだらいいですか?」
インターネット上の掲示板で、
これから魔術の世界に踏み込もうとしている人達がこう質問するのをしばしば目にする。
この様な問いに対する最も教育的な解答は、
恐らく某達人が書いたこれだろう。
「魔術や魔法と銘打ってあるものは
手当たり次第にすべて読め」
(下から4つ目の質問)
確かに正論ではある。
熱意と時間と気力体力にあふれた人にはまさに最適な方法だろう。
しかし、
(特にインターネットのお陰で)
魔術に関する大量の情報が飛び交っている現在、
闇雲に情報を仕入れてワザワザ回り道をする必要性は薄いのではなかろうか。 特別な才能を持たない人達にとっては、
むしろ基本となる知識を先に学んで、
情報を整理しながら学習して行く方が良いと筆者は思うのだ。
では独断と偏見で筆者が選んだ魔術入門書を以下に並べてみよう。
<魔術とはどういうものか?
何をするのか?
どうしたら魔術師になれるのか?
についてきちんと説明している本。
決して読者に信じる事を強制しないその姿勢と、
柔らかく分かり易い語り口で魔術がそれ程奇異な存在で無い事を訴える その文章からは、
元英国公務員だったという著者のマトモさと誠実さが伺える。 (もっとも著者の科学的知識はそれ程正確ではない。
しかし、
著者の誠実さを考えれば充分許容範囲内である。)
魔術に興味がある人は、
とにかく
「理論篇」
だけでも読んでみて欲しい。
1970年代に角川文庫から出たW.E. バトラーの
「魔法入門」
と 「オカルト入門」
は日本で初めて紹介された本格的魔術入門書であった。
「新版 魔法入門 − カバラの密議」
は2000年に再刊された「魔法入門」である。
元々1950年代にイギリスで出版された本なので、
内容が堅苦しいと感じる人もいるかもしれない。
しかし基礎的な概念や瞑想法から、
小五芒星儀礼、
中央の柱まで、
平易な言葉でバランスよく説明されており、
現代のスタンダードな魔術入門書の原型ともいうべき本である。
残念ながら、2011年11月現在、
何れも絶版になっているので、
古本屋で見つけたら即ゲットをお勧めする。
バトラーが創設した
ディオン・フォーチュンの霊統を受け継ぐ世界最大の魔術結社、
『光の侍従』
(Servants of Light)
の入門志願者向けに書かれた本である。
上記「魔法入門」
よりも更に基本的かつ地味な部分について具体的に解説しており、
間違いなく魔術の基礎訓練に関する最高の入門書の一つである。
他の入門書に従って学習する人も、
この本だけは目を通しておいた方が良い。
2011年11月現在、これも絶版状態である。
また、
この本に副読本として挙げられている
「神秘のカバラー」
は国書刊行会より出版されている。
上記バトラーの本の翻訳者であり、 イシス学院 の主催者でもある大沼忠弘氏の魔術入門書。 なかなか読み易い。
本書は、上記の大沼氏がロンドンに留学した際に魔術を学ぶ過程を通して、
魔術の基本概念と訓練法を紹介していく形式になっている。
概念と修行が密接に結びついて紹介されているため、
読者は頭だけでなく体験を通して、
魔術の基本概念や象徴図形を学んで行くことが出来る。
特に古代ギリシャなどの象徴図形の解説は、
まさに古代哲学の専門家である大沼氏の面目役如といったところである。
ただ修行法を寄せ集めただけで何の哲学も感じられない凡百の魔術入門書と一線を画す、
非常に良く練られた体系に基づいた記述は、
西洋の名著と呼ばれる入門書と比較しても遜色無いだろう。
ただ残念な事に、
概念の説明の為に『無の瞑想』
のような真面目に行うとかなり難しい訓練法が最初の方に来てしまっているのは初心者の混乱の元になるかもしれない。
初心者は、
難しい訓練は適当に流しておいて、
呼吸法などの基礎訓練を上記のW.E.バトラーの
「魔法入門」
「魔法修行」
などを参考にしながら着実に行っていくのが良いだろう。
ムー・ブックスの中の一冊だが、
安くて手頃な魔術入門書で内容も充実、、、 しかし現在絶版。
それなりに出回っていたので古本屋を捜せば見つかるでしょう。
学研からは他にも、 魔術の基礎知識を解説した 「白魔術・黒魔術」 (長尾豊著、ポケット・ムー・ブックス) が出ているがこれも絶版である。 これも古本屋で見つけたら即ゲットすべし。
上記「高等魔術実践マニュアル」の資料の出所である、
日本を代表する黄金の夜明け系魔術結社 I.:O.:S.:
の仮入会者用カリキュラムとその他関連文書をまとめたもの。
恐らく日本で最もレベルの高い魔術入門書である。
「小五芒星儀式が(なんとか)出来ます」
位の人でもこの本のカリキュラムをこなす事には相当苦労するであろう。
しかし、
一年以上かかるカリキュラムをしっかり学習すればビギナーのレベルを越えられるのは確実である。
残念な事に、2011年11月現在、
書籍版は絶版。
古書にバカ高い値段がついているが、
Webで公開されている最新のPDF版テキストを入手できるので、
無理に買う必要はない。
これは本では無い。 上記の某達人が属している結社の初心者向けWebページである。
(後々、初心者向けページの必要性を実感されたらしい。)
入門書からは外れがちな
「魔術界の常識」
が網羅されているので、
必ず目を通しておくべし。
初版が刊行された1988年以来、
英語圏における
GD系魔術の入門書の定番中の定番とも言えるベストセラー。
魔術の基礎訓練から肉体訓練、
召喚魔術、
護符魔術、
性魔術までバランス良く幅広く扱っている。
更に心理学、現代思想、等の20世紀以降の魔術の進歩をも取り込んでおり、
現代における魔術の姿を総合的に提示している入門書は本書以外にない。
当に"Modern Magick"の名に相応しい本である。
相当な盛り沢山の内容だが、
いい加減な記述でお茶を濁すことなく、
最低限実践に必要なことはしっかりと押さえている。
そのため第2版も第3版もデカくて分厚いので、
英語力のない人には歯応えがありすぎかもしれない。
英語が読める人にとっては世界一判りやすい クロウリー魔術 (Thelemic Magick) 入門書。 基礎的な概念から修行法まで、 一つ一つ懇切丁寧に記述されている。 クロウリーが嫌いな人でも、 一度読んでみると色々と参考になるだろう。
月刊少年ガンガンに連載されていた
(2003年10月最終巻刊行!) コンピュータRPG
(というよりもエニックスのドラゴン・クエスト・シリーズの) パロディ・ギャグ・少年向け漫画。
しかしながらその内容は実践魔術師にとって、
凡百の
「おまじない本」
や下手な魔術入門書などよりもはるかに有益なものである。
ファンタジーと現実との違いを考えられる人間ならば、
この漫画だけで魔術(そして呪術) の基本的考え方は分かってしまうだろう。
腹が痛くなる程笑いこけながら魔術が学べてしまうという意味で、
少なくとも日本語で読めるものとしては、
現時点で唯一無二のものと言って過言では無いだろう。
次章ではいよいよ魔術結社に入門する方法について述べよう。