『形成の書』への注釈

by W. W. Westcott.
Translation from English to Japanese by Hocuspocus.

この『隠秘学』 の論文を明確に理解する為には注を見る前に全文を読み通す事がとても大切であり、 それによって幾つかの章にある共通の考えが心の中で一つの確固たるものになるだろう。 幾つかの部分に対する独立した考察はこの主題のおおまかな把握の後にすべきである。 さもなくば非常に混乱するであろう。

この手掛かりとして考えられるべきものは 『数と文字の観念論』と 『宇宙』の様々な部分との『寓意の並列』である。 それは特にフリーメイソンリーやタロット、 そして後代のカバラに今だ現存する多数の神秘的な形態や儀式に多くの光を当て、 薔薇十字団の占星学―神智学的枠組みの理解への大いなる手助けとなる。この『論文』の内容の全てを得る為には、 錬金術的帰属『イシアク表』を参照しながら、 そしてタロットデッキの大アルカナの絵と象徴と属性の一揃え全てを参照しながら学ばねばならない。 その為にはエリファス・レヴィ著『神聖なる王国』の拙訳を見て欲しい。

最古の文書の写本には母音記号が無く、 最新の版にはそれがある事も書き留めておこう。 7世紀までヘブル語には母音記号の形式は完成されていなかったし、 その当時でさえも常に使われていた訳ではなかった。 ギンスバーグは570年頃にパレスチナのラビ・モチャ によって母音記号の形式が発明されたと主張している。 しかしアイザック・メイヤーは2世紀のヘブル語の文書に母音記号の疑い無き痕跡があると言っている。 A.E.ウェイトによれば母音記号を使ったヘブル語の文書で10世紀より古い物は無いとの事である。

『セフェール・イェツィラー』という言葉はヘブル語では右から左に 『SPR YTzYRH』 サメク、ぺー、レシュ、ヨッド、ツァダイ、ヨッド、レシュ、ヘー と書かれる。 字の対応のさせ方は人によって変わってくる。 ヨッドは英文字では色々と、 『I』、『Y』或いは『J』、またある時は『Ie』と書かれる。 ツァダイは『Tz』とするのが適切である。 『Z』と書く者もいるが、 これはヘブル語に本当の『Z』すなわちザインがある事から分かる様に誤解を招くものだ。

    第一章

    この章の12の節は『宇宙』の『形成』と『発展』 についての哲学的論考を紹介するものである。 『3つ組』『7つ組』そして『12ヶ組』 の3種類の文字の組については後に回されており、 特に『数』の概念に関連して、 そして明かに『4つ組』と『6つ組』の組合わせとして、 『10ヶ組』が主に考察されている。

  1. 32

    これは『智恵』の『小径』または『道』の数であり、 それらは補完するものとして足し合わされるのである。 32はヘブル語では『LB』ラメド、ベトと書かれるが、 これは五書の最期と最初の文字である。 32という数は『2 x 2 x 2 x 2 x 2=32』として得られる。 ライブ(『LB』のヘブル語読み) は『人間の心臓』を意味する。

    ここで使われている『小径』という言葉はヘブル語で『NTIBUT』 ネチブトと言う。 『NTIB』は主に小道、又は獣道を意味したが、 ここでは象徴的に基督教徒が『道』という言葉を 『生き様』という意味で使うのと同じ意味で使われている。 カバラの文書では他に、段階、力、形、効果、 そして後の時代では教義上の手続きを意味する。

  2. 『主』

    ヤー。この神聖なる名は詩編68の4に見られる。 この名はギリシャ語では『kurios』、 ラテン語では『dominus』と訳され、 英語では普通『主』(Lord)と訳される。 これはまさしく『IHVH』またはイエホヴァー、 或いは近代の学者達によればヤーヴェ、 という言葉の前半部である。

  3. 『万軍の主』

    イエホヴァー・ツァバオト。 この神聖なる名は英語版聖書ではイエホヴァー・サバオト、 又は『万軍の主』として詩編24の10に載っている。 『TzBA』は軍隊を意味する。

  4. 『イスラエルの神』

    ここでは『神』という言葉として『ALHI』が使われているが、 この母音記号がついていないヘブル語は恐らく『神』、 または『神々』、 或いは『我が神』を意味するものであろう。

  5. 『生けるエロヒム』

    この言葉は『ALHIM ChIIM』である。 『ALHIM』は、しばしば英文字で『Elohim』と書かれ、 或いは ゴドフリー・ヒギンズは『Aleim』と書いたりするが、 神聖な男性名エル『AL』の女性形であるエロア『ALH』の男性複数形らしい。 通常は『神』と訳され、 たくましく強大で至高なるものを意味する。 『ChIIM』は生活や生命を意味する『ChI』の複数形である。 『ChIH』は生きた動物で、 『ChIVA』もそうである。 『ChII』もまた生命を意味する。 フレイはその辞書の中で『ChIIM』は『lives』や 『vitae』の様な複数形の言葉であると述べている。 本来の単数の『生きる』は『ChIA』である。 そしてエロヒム・カイームは、 ユダヤ教徒や基督教徒の先入観から離れて、 『生ける神々』或いは『命の神々、すなわち、生きる者達』 となるのである。 リッタンゲリウスは『Dii viventes』 すなわち『生ける神々』 は名詞と形容詞の両方の語が複数形であると述べている。 ピストリウスは両方共省略している。 ポステルウスは正統的に『Deus Vivus』としている。 エロヒムは『神聖なる一者』から発せられる『七つの力』であり、 それは『terra viventium』を、 顕現された生ける世界を支配する。

  6. 『神』

    この場合は単純に『AL』エルである。

  7. 『書』

    セファリム『SPRIM』は『SPR』の複数男性形であり、 通常、本とか手紙などと訳される。 ここでの意味は平たく言うと『表現の形式』である。

  8. 『数』として、『文字』として、そして『音』として

    ここでは3つのヘブル語『SPR』『SPR』『SIPUR』 が母音記号無しで与えられている。 後代の編集者はこの難しさをやわらげようとして、 『SPR』『SPUR』『SIPR』と書き、 母音記号を付けてセパル、セープル、セイパルと読ませている。

  9. 『10』は言い表しえぬセフィロト

    この言葉は『SPIRUT BLIMH』セフィロト・ベリマーである。 最も単純な訳は『無からの声』である。 『カバラの10のセフィロト』は 『神聖なる源からの10の原初の流出』 であって、 それは連続的にあらゆる次元における全ての顕現を引き起こす根源的な力なのである。 バクストルフはセフィロトについて『論理的断定』 であると言っている。 筆者にはこの言葉はラテン語の『spiritus』、 つまり、『霊』『魂』『風』、の仲間である様に思える。 クィンティリアンは『音』、又は『雑音』という意味で使っている。 ベリマーの意味はもっと不確かだ。 リッタンゲリウスは常に『praeter illud ineffabile(言い難きを超えた何か)』であると述べている。 ピストリウスは『praeter ineffabile(言い難きを超えたもの)』 であると述べている。 ポステルウスはラテン語訳に単純にベリマーという言葉を入れる事によってこの困難を回避している。 フレイのヘブル語辞書では、 『BLIMH』 は何の示唆も無く『無』と訳されている。 『BLI』は『否』であり、 『MH』は『何か』である。 カバラの文書の中では、 『神聖なる声と力』たるセフィロトは、 その聖なる性質から『ineffbilis』、語り得ぬもの、と呼ばれる。

  10. 『3つの母字』、『7つの単字』そして『12の複字』

    『3つ組』『7つ組』『12ヶ組』 のヘブル文字の分類は全てのカバラの哲学において貫徹されている。 多くの古代の著者達は故意に目くらましを、 A、M、T、アメトすなわち『真実』の『3つ組』を 『AMN』アーメンにするといった虚構を、 加えている。

  11. 肉体の割礼

    『2つの契約』は、 言葉或いは聖霊によって、 そして肉体によって、 イェホヴァーがアブラハムと交わした(創世記17)。 『契約の割礼』はまさにアブラハムと彼の子孫の為に交わされた 『神聖』なる約束の外面の目に見える印であった。 ヘブル語で割礼にあたる言葉はムラー『MULH』である。 『MLH』が『DBR』ダバル、 すなわち『verbum』又は『言葉』の類義語である事に注意。

  12. それを形造りし『彼』を彼の玉座へと戻す

    リッタンゲリウスは「彼の玉座の上に形成する力を戻す」 と述べている。 ポステルウスは「仕掛けをその場所に戻す」と述べている。

  13. 深淵

    この言葉は『OUMQ』、 何故なら『OMQ』すなわち深さ、広大さ、丘、という言葉故に。

  14. 計り得ぬ高さと深さ・・・広がっている。

    私のヘルメス的儀式にてこのイエツィラー的属性は説明される 。

  15. 唯一の『神』たる『主』

    ここの言葉は『ADUN IChID AL』、 又は「唯一なるエル、アドナイ(Adonaiと通常書かれる)」 である。

  16. この言葉は『MOUN』、すなわち『住居』『住みか』『玉座』である。

  17. 『稲妻』

    以前の版では「まばゆいばかりの閃光」という言葉を使っていた。 ヘブル語では『BRQ』である。 多くのカバリスト達は『10のセフィロト』 が如何にしてジグザグの稲妻で象徴されるかを示している。

  18. 『神』

    ここの『神聖なる』名前はイェホヴァーである。

  19. 『走り、戻る』(生き物達は走りそして戻った)

    元の文書では単に『RTzUAV ShUB』ラテン語では「currendo et redeundo」 と述べているだけであるが、 多くの注釈者達はここはエゼキエル書1の14の引用、 『H ChIVT』 すなわちケルビムの姿をした生ける創造物への言及だと考えている。

  20. 生ける『エロヒム』の霊

    『RUCh ALHIM ChIIIM』、 或いはRが述べている様に『spiritus Deorum Viventium』 。 これらの言葉の正統的な訳は『生きている神の霊』であろう。

  21. 『時の生ける神』

    『AL ChI H OULMIM』。ここではまさしく『神』は単数である。

  22. 『声』、『霊』、そして『言葉』

    『声』『霊』『言葉』はそれぞれ『QUL』『 RUCh』『 DBR』である。 『預言者の霊感』を意味する非常に注目すべきヘブル語の表現は 『BATh QUL』、 『声の娘』であった。

  23. 形無き空虚なもの

    『THU』と『 BHU』、これら2つの言葉は創世記1の2に現れ、 『荒れはてた空虚なもの』と訳される。

  24. 『水』から『彼』は『火』を形造り

    根本的元素が生み出された順序に注意。 まず、『霊』(アカシャとかエーテルとか)。 次に『空気』、ヴァユ。 次に『水』、 アパスが固い元素としての『大地』、 プリティヴィに凝縮し、 そして最期に『水』から『彼』は『火』を形造った。

  25. オファニムとセラフィムそしてケルビム

    最初の名前はしばしば『Ophanim』と書かれ、 ヘブル文字では『AUPNIM』と書かれる。 『エゼキエルの幻視』1の16に現れ、 『車輪』と訳される。 『ShRPIM』はイザヤ書6の2に出て来る神秘的な存在である。 この言葉は一方で『蛇』と訳され、 民数記の21の6では『炎の蛇達』となっている。 また同じく民数記の21の8節でイエホヴァーが 『汝を炎の蛇に変え、そして柱の上に置かん』 と言った時の『炎の蛇』がそうである。 ケルビム(Kerubim)という言葉はヘブル語原文では『ChIVTh H QDSh』 『聖獣達』である。 私は、 列王記(上)6の23と出エジプト記25の18、 そしてまさに創世記3の24で述べられている様な 『聖なる神秘の獣』の他の聖書の言い回しに従って、 思い切ってケルビムという言葉をすえた。 聖書辞典では一般的には『Cherubim』と書かれているが、 ヘブル語では頭文字はKであってChではない。

  26. 3つ

    初版ではこの『3つ』という言葉を見落としており、 それで訳したが故に、 4つの天の御使いの組となっていた。

  27. 風をおのれの・・・しもべとされる

    これは詩編104の4節である。

  28. IHV

    ここでは『IHV』という名前の並べ替えが続く。 この名前は『聖四文字』 イェホヴァーから2番目或いは最後のヘーを取った『聖三文字』であり、3番目の世界又はイェツィラー界により相応しいものである。 『HVI』は『在る』の命令形で『汝在れ』を意味し、 『HIV』はその不定型、 そして『VIH』は未来形である。 『IHV』においてはヨッドが『父』、 『ヘー』がビナーすなわち『天上の母』、 そしてヴァウが『小宇宙』すなわち『息子』に対応する事に注意せよ。

  29. 生ける『神々』の・・・『南』、『北』

    『10ヶ組』が四元素を表す『4つ組』と空間の6つの方向を表す『6つ組』に分けられる事に注意。

  30. (『形成の書』第一章へ戻る)

    第二章

    この章はヘブル語のアルファベットの22の音と文字についての哲学的言及によって構成されており、 それらは話す事によって空気と結びつけられている。 またこの章はこれらの文字が言葉を形作る時の用法、 すなわち概念の表れ、 又は物質的実体の象徴としての使われ方をも示している。

  31. 創造物

    この言葉は『NPSh』。 通常『』と訳され、 人間や動物或いは存在する物が持つ生ける人格を意味する。 これは神智学の『プラーナ』『カーマ』 の興奮を足し合わせたものに殆ど対応する。

  32. 喉で、口で・・・唇によって

    これは文字を喉音、口蓋音、舌音、歯音、 唇音に分ける近代の分類である。

  33. 200と31の智恵の門

    1から22までの全ての数を続けて足し合わせると242という数が得られる。 ヘブル文字は242の異なる対として配置出来る。 すなわちab, ag, ad, からatまで、 次ににba, bb, bg, bd, から btまで、 そして同様にts, ttまで続く。 これは正しい順序に並んでいるものだけで、 逆順序のものは含まれていない。 何故11が引かれて231になるのかについては、 ポステルウスの版の表と注15を参照の事。

  34. 存在ならぬ物

    この言葉は『AIN』『無』である。 アインはアイン・ソフ『限り無きもの』、 そしてアイン・ソフ・アウル『限り無き光』を生み出す。

  35. この言葉は『GUP』。 通常、 動物の物質的肉体に宛てられるが、 ここでは『完全なる一者』を意味する。

  36. (『形成の書』第二章へ戻る)

    第三章

    この章は特にアレフ、メム、シンの『3つの母字』で表される 『3つ組』の本質に関係している。 これらの3つの方向、 つまり 『大宇宙』又は『宇宙』の中、 『一年』又は『時期』の中、 『小宇宙』又は『人間』の中での発展が示されている、

  37. 『天秤の支点』の様にそれらの間に立っている

    均衡の重要性は常にカバラにおいては繰り返し言われている。 『Siphra Dtzeniouta』或いは『神秘の書』 はこの安定な存在の基本的必要性としての『均衡』 への言及で始っている。

  38. 天界

    ヘブル語のヘシャマイム『HShMIM』はその中にアエシュの元素、 火、そしてミム、水を含み、 更にシェム、名前 (この『名前』は元素の由来となる『IHVH』である) をも含んでいる。 『ShMA』はカルデアにおいては『三位一体』を表す言葉である (パークハースト)。 『ShMSh』は太陽、 そして『光』、 マラキ書4の2のキリストの表現、正義の太陽である。

  39. 造り出され

    ここのヘブル語『BRA』は語根である。 聖書では3つのヘブル語が造作、生成、 創造の概念を表す時に使われている。

    『BRIAH』ブリアー 、創造、創世記1の1。

    『OShIH』アッシャー、 完成、創世記1の31。

    『ITzIRH』イェツィラー、形成、 創世記2の7。

    カバリスト達はこれらに 『未顕現から顕現するものを生み出す』という意味の 『ATzLH』という言葉を加えた。

  40. それらを『宇宙』の・・・封印した

    これらの幾つかの構成物は以下の表で表される。

    流出 シン アレフ メム
    大宇宙 原初の火 原初の水
    宇宙(世界) 天界 大気 大地
    元素 地上の火 空気
    人間
    一年(の気候) 暑さ 温暖 寒さ

  41. (『形成の書』第三章へ戻る)

    第四章

    ここは『7つ組』、 『7つ』の力と性質の説明を受け持つ章である。 ここでは 『宇宙』『一年』そして『人間』 の3種類の帰属が用いられる。 補遺の文節はカリッシュによって近代の版に載せられたものであり、 『7つ組』のそれぞれの文字を、 惑星、 曜日、 人間の属性と感覚器により明確に結び付けている。

  42. 2つの『文字』・・・は5000と40

    これらの数は編者や複写者の間のに生じる違いの原因であり、 どの編者の組合わせを取っても一致することは殆ど無い。 私は1から7まで続く整数による積の連続的掛け算から生じる数を述べておく。 2 x 1 = 2、2 x 3 = 6、6 x 4 = 24、24 x 5 = 120、120 x 6 = 720、 720 x 7 = 5040。

  43. 太陽、金星、水星、月、土星、木星、そして火星

    特定の文字の各惑星への帰属に関して学識あるイエスズ会士アタナシウス・キルヒャーはベトを太陽に、 ギメルを金星に、ダレトを水星に、 カフを月に、ペーを土星に、レシュを木星に、 タウを火星に当てはめている。 カリッシュは補遺の文節において異なる帰属を与えている。 霊的透視による調査によればどちらも間違っている。 コート・デ・ゲベリンやエリファス・レヴィ、 そして私のベンバインのイシアック表への注を調べる事。 真の帰属は恐らく何処にも出版されていない。 ここで述べた惑星の名前はカルデア語のものである。

  44. 7つの天界、7つの大地

    多くの隠秘学の古き書物においては、 『7つの天界』と『7つの大地』が誤って印刷されており、 私は故意に間違いが加えられていると信じている。 あるヘルメス的文書は正しい名前とつづりを伝えている。

  45. そしてそれ故・・・いるのだ。

    これら『7つ』の文字の更なる帰属について、ポステルウスは 『『Vita - mors(生―死)、 Pax - afflictio(平和―没落)、 Sapientia - stultitia(智恵―愚鈍)、 Divitiae (Opus) - paupertas(富裕(業績)―貧困)、 Gratia - opprobrium(恩寵―不興)、 Proles - sterilitas(子孫―不毛)、 Imperium--servitus(命令―隷属)。』 と述べている事に注意。 ピストリウスは 『Vita - mors(生―死)、 Pax - bellum(平和―戦争)、 Sapientia - ignorantia(智恵―無知)、 Divitiae - paupertas(富裕―貧困)、 Gratia - abominatio(恩寵―嫌悪)、 Semen(Proles) - sterilitas(種子(子孫)―不毛)、 Imperium (Dominatio) - servitus(命令(支配)―隷属)。』 と述べている。

  46. (『形成の書』第四章へ戻る)

    第五章

    この章は特に『12ヶ組』に関係しており、 12という数自体、 それを構成するものの性質について、 宇宙、年、 そして人間の3つの区分をもう一度使って言及している。 最期の節は全ての文字の数の要約を述べている。 補遺は幾つかの文字の帰属の組合わせについて述べている。

  47. ヘー、ヴァウ、・・・、そしてクォフ

    異なる著者達が色々なやり方で文字を当てはめているので、 これらの文字を混同する事を避ける必要がある。 へー又はHはケス或いはヘス、Chと混同してはならない。 テトThは最期の文字で複字の一つであるタウT と区別しておく必要がある。 何故ならばこれらの文字の英語的発音は時々tにもth にもなるからだ。 ヨッドはI、Y、又はJである。 サメクは単純にSであり、 母字の一つであるシンShと混同してはならない。 アインはしばしば英語的ヘブル語文法ではAyinと、 そして時にはGnainと書かれる。 ツァダイははザインZと混同してはならない。 そして最期にクォフ、 QはしばしばKで置き替えられるが、 更に言えば本当のKもあるので、 殆どこのやり方を守る事は出来ない。

  48. 『想像』

    ポステルウスは『疑念』、 そしてピストリウスは『心』 だと言っている。

  49. テト、シン、タウ、・・・ダレト

    これらの文字はヘブル語の学術用語における黄道12宮の頭文字である。 それらは以下の様になっている。
    テトテラー白羊宮
    シンショール金牛宮
    タウサウミン双児宮
    サメクサルタン巨蟹宮
    アレフアルヤー獅子宮
    ベトベスレー処女宮
    メムマツニム天秤宮
    アインオクェレブ天蠍宮
    クォフクェシェス人馬宮
    ギメルゲディ磨羯宮
    ダレトダリ宝瓶宮
    ダレトダギム双魚宮

  50. ニサン

    ニサンの月は大体3月29日頃から始まる。 イヤー(Yiar)はIyarともAiarとも書かれる。 ヘブル文字ではAIIRである。

  51. 『12』の器官

    この器官の一覧は版によって変わっている。 全ての版において、2つの手、2つの足、2つの腎臓、肝臓、 胆嚢、脾臓については一致している。 ポステルウスは更に intestina, vesica, arteriae, 腸、膀胱、動脈を当てはめている。 リッタンゲリウスはこれと同じである。 ピストリウスはcolon, coagulum (spleen) et ventriculus, 結腸すなわち大腸、凝乳そして胃を当てはめている。 ここでの主な困難はヘブル語の文書に付随したものであり、 それが2つの意味、 一つは非公開で秘密にされ隠されているもの、 そしてもう一方は元の意味をぼかしたもの、 から成り立っている事にある。

  52. 『エロヒム』

    神聖なる諸力。 IHVHすなわち『聖四文字』ではない。

  53. (『形成の書』第五章へ戻る)

    第六章

    この章は前の五つの章のまとめである。 それは宇宙と人間を創造された形の中にある数の力の分布の枠組みの真実を証言するものとみなしており、 そして物語を加えながら、 この哲学が『神聖なるもの』によってアブラハムに示され、 彼はそれを受け取りそして、 『契約』の元の『智恵』の形として、 信心深く受け入れた、 と締めくくっている。

  54. テリ

    『竜』、TLI。 ヘブル文字の数価の総和は440、 つまり400と30と10である。 最も信頼性のある意見はタリまたはテリが黄道の巨大な輪に連なる12の獣帯の星座の事を指しているというものである。 そして黄道12宮は初めの場所で終わるが故に、 古代の隠秘学者達は尾を口に入れた『竜』を描いたのだと。 ある者達はタリが『天の北極』周辺を周回する 『竜座』を指していると考え、 他の者達は『銀河』を指していると考え、 更に他の者達は『竜の頭』と『竜の尾』、 上と下の月節を結ぶ想像上の線だと考えた。 ドルフィン・フランクによればテリはアラビア語との事である。

  55. 幸福

    幸福、又は良き終わり、或いは単純に善、TUBH。

  56. 不幸

    不幸、又は悪しき終わり、或いは単純に悪、ROH。

  57. 3つの友は・・・、そして舌。

    この翻訳の元になったヘブル語の版は残り6つの帰属を省略している。 マイヤーはこの文節を以下の様に与えている。 『友好の3つ組は心臓と2つの耳。敵意の3つ組は肝臓と胆嚢。 3つの命を与えるものは2つの鼻孔と脾臓。 3つの死に関係したものは口と胴体の下の2つの穴。』

  58. 『神』

    この場合、この名前はAL、エルである。

  59. そして全ては他のものとつながっているのだ。

    この最期の文節は一般的にこの論文の他の部分よりも古くはなく、 他の著者によるものと考えられている。

  60. 最も高き者たる『主』

    OLIU ADUN。 アドヌン又はアドン、或いはアドナイ、 ADNIは普通は『主』と訳される。 エリュン、OLIUNは『最も高きもの』の普通形である。

  61. 『彼』

    リッタンゲリウスは『『聖四文字』を信じ』としているが、 この言葉はヘブル語ではない。

  62. 口頭の誓約。

  63. 話し

    ヘブル語では『彼の舌の上』となる。

  64. そしてアブラハムに・・・示された。

    ラビ・ユダ・ハ・レヴィによるヘブル語の版は 「そして彼の事を話し、我は汝を腹の中に形造る前に、 我は汝を知っていた。」という言葉で締めくくっている。 ラビ・ルーリアのヘブル語の版は筆者がここで訳したものである。 ポステルウスは『『彼』は彼を水に入れ、 『彼』は霊の中で起き上がり、 『彼』は12の宮を用いて7つの好ましい形で彼に火を付けた。』 と書いている。 メイヤーは 「Er zog sie mit Wasser, zundet sie an mit Feuer; erregte sie mit Geist; verbannte sie mit sieben, goss sie aus mit den zwolf Gestirnen.」 すなわち 「『彼』はそれらを水で描き、火で燃えたたせ、霊と共に動かし、 7つと共に分け、12と共に送り出した。」 と書いている。

  65. (『形成の書』第六章へ戻る)


訳注

  1. 字の対応の・・・変わってくる

    この文書においてウェストコットが用いているヘブル文字と英文字との対応は以下の様になっている。

    ヘブル文字英文字
    アレフA
    ベトB
    ギメルG
    ダレトD
    ヘーH
    ヴァウV,U
    ザインZ
    ケトCh
    ヘブル文字英文字
    テトTh
    ヨッドI
    カフK
    ラメドL
    メムM
    ヌンN
    サメクS
    アインO
    ヘブル文字英文字
    ペーP
    ツァダイTz
    クォフQ
    レシュR
    シンSh
    タウT

    ヘブル文字の日本語表記には色々あるが、 この文書では語尾に英語で『th』と書かれているものは『ト』 と表記する様にしている。
    ヘブル文字の具体的な形とそれらの意味については、 例えばKoriel氏のサイトの 『Session #01 - ヘブライ語の知識 - 』を参照の事。

  2. イシアク表

    『The Isiac Tablet』。イシスのベンバイン表と呼ばれる。 詳細はこちらのページ或いは こちらのページを参照の事。 邦書では、MPホールの象徴哲学体系1『古代の密議』 が1章を割いて詳しく説明しているそうである。

  3. 五書

    『Pentateuch』。 旧約聖書の最初の5つの書、 創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記の事。 『律法の書』(トーラー)とも呼ばれる。

  4. 詩編

    勿論旧約聖書の『詩編』の事。

  5. ユダヤ教徒や基督教徒の先入観

    一神教の概念の事。 『唯一の神』が複数では矛盾してしまう訳である。

  6. Deus Vivus

    一神教の概念に則した単数形になっている事に注意。

  7. R

    『R.』って誰? 文中でよく出てくるリッタンゲリウス(Rittangelius)の事?

  8. 『エゼキエルの幻視』

    勿論旧約聖書の『エゼキエル書』の事。

  9. 3番目の世界又はイェツィラー界

    カバラの四界、 すなわち神の意志或いは力が物質世界に顕現していく4つの段階、

    1. アツィルト界(元型・イデア的段階)

    2. ブリアー界(創造的、抽象的段階)

    3. イェツィラー界(形成的、具現的段階)

    4. アッシャー界 (物質的、最終的段階。或いは物質世界そのもの。)

    の内、3番目のもの。『形成の書』の名前は勿論ここから来ている。

  10. ウェストコットの第2版では『創造物(creatures)』 と『形(form)』の訳語は両方共『魂(soul)』だったとの事である。

  11. 『プラーナ』

    古代インドのサンスクリット語で、 中国でいう所の『気』にほぼ該当する言葉である。

  12. 『カーマ』

    古代インドのサンスクリット語で『性愛』『情欲』を意味する言葉。

  13. 1から22までの全ての数を続けて足し合わせると242という数が得られる

    大嘘。 正解は 1 + 2 + 3 +...+ 21 + 22 = (22+1) X 22 / 2 = 253 だ。 この注32のこれ以降の文も変。 (文字の順序を揃えるのならbaは入らないだろーが。 また、aaが抜けてるのにbbとttは入っている。) ウェストコットは医者の癖に算数が苦手だったのだろうか? それとも元の文書をHTML化した人の間違いか?
    多分ウェストコットがやりたかった算数は以下の様なものであろう。
    22個の文字を2回使って得られる対の数は 22 X 22 = 484 。 そこから同じ文字で出来た組合わせ(aa, bb, ..., tt)の数22を引くと 484 - 22 = 462 。 文字の順序が逆になっていない (例えば、abは良いがbaは駄目) ものだけを選ぶとその半分になるので 462 / 2 = 231 が得られる。 これは1から21までの数を足し合わせた数でもある。
    もっとスマートなやり方が知りたければ、 高等学校の確率・統計の教科書を参照の事。

  14. 『竜の頭』と『竜の尾』

    占星術用語でいう所の2つの月節(ノード)、 『カプト・ドラコニス』(ドラゴンズ・ヘッド) 及び 『コーダ・ドラコニス』(ドラゴンズ・テール) の事。
    黄道と月の軌道との交差点の事である。 詳しくはこちらのページを参照の事。


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